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レセプト等情報を用いた脳卒中、脳神経外科医療疫学調査

J-ASPECT study (Nationwide survey of Acute Stroke care capacity for Proper dEsignation of Comprehensive stroke cenTer in Japan)

1. 臨床研究について

 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「臨床 研究」といいます。その一つとして、九州大学病院脳神経外科では、現在脳卒中と脳神経外科医療を受けた患者さんを対象として、医療体制の整備に関する「臨床研究」を行っています。

 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の審査 を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、令和3年3月31日までです。

2. 研究の目的や意義について

 超高齢社会の本邦において、後遺障害による寝たきりの原因となる脳卒中の救急治療は 大きな課題となっています。高齢者医療費の最大の原因である脳卒中の患者数は今後も更 に増加し、2020年には300万人に達すると予想されています。緊急性の高い脳卒中治療に ついては、医療機関の集約化、広域化と連携強化が重要となりますが、地域特性に応じた 整備の為には、全国的な規模での地域毎の実態を調査することが必要です。

 本研究では本邦の脳卒中、脳神経外科医療施設の施設情報と、診療の質的評価・治療成 績・予後との関連を調査し、その適正な配置について提言を行うことが目的です。

3. 研究の対象者について

 全国の脳卒中、脳神経外科医療を診療している施設において、脳卒中と脳神経外科疾患 で治療した患者さんを対象としています。この中には九州大学病院も含まれています。患 者さんの情報は、DPCデータ、レセプトデータを提供していただきます。DPCやレセプト とは、日本における医療費の支払いに使用される評価方法であり、本研究はカルテに記載 された個人情報や画像データを利用するものではありません。対象となるのは平成27年4 月1日から令和2年3月31日の間に退院された患者さんで、全国で年間約50万のデータ が集まることが予想されます。九州大学病院では年間約3千のデータ登録を目標としてい ます。

対象者となることを希望されない方は、下記連絡先までご連絡下さい。

4. 研究の方法について

 この研究を行う際は、カルテより下記の情報を取得します。研究組織で策定した臨床指 標を用いて、測定結果と取得した情報の関係性を分析し、脳卒中のアウトカム(死亡率な ど)に対する影響等を明らかにします。

〔取得する情報〕

(1) DPCファイル上、主傷病名、入院の契機となった傷病名、もしくはレセプト電算フ ァイル上の傷病名に脳卒中と脳神経外科の診療に関連する病名の少なくとも一つを含 みます。以下に例として脳卒中分野の傷病名を示します。
1. 脳梗塞
(ア) I63.0 脳実質外動脈の血栓症による脳梗塞
(イ) I63.1 脳実質外動脈の塞栓症による脳梗塞
(ウ) I63.2 脳実質外動脈の詳細不明の閉塞又は狭窄による脳梗塞
(エ) I63.3 脳動脈の血栓症による脳梗塞
(オ) I63.4 脳動脈の塞栓症による脳梗塞
(カ) I63.5 脳動脈の詳細不明の閉塞又は狭窄による脳梗塞
(キ) I63.6 脳静脈血栓症による脳梗塞,非化膿性
(ク) I63.8 その他の脳梗塞
(ケ) I63.9 脳梗塞,詳細不明
2. 非外傷性脳内血腫
(ア) I62.0 硬膜下出血(急性)(非外傷性)
(イ) I62.1 非外傷性硬膜外出血
(ウ) I62.9 頭蓋内出血(非外傷性),詳細不明
(エ) I61.0-61.9(脳内出血)
3. クモ膜下出血
(ア) I60.0 頚動脈サイフォン及び頚動脈分岐部からのくも膜下出血
(イ) I60.1 中大脳動脈からのくも膜下出血
(ウ) I60.2 前交通動脈からのくも膜下出血
(オ) I60.4 脳底動脈からのくも膜下出血
(カ) I60.5 椎骨動脈からのくも膜下出血
(キ) I60.6 その他の頭蓋内動脈からのくも膜下出血
(ク) I60.7 頭蓋内動脈からのくも膜下出血,詳細不明
(ケ) I60.8 その他のくも膜下出血
(コ) I60.9 くも膜下出血,詳細不明
4. 一過性脳虚血発作 G45
(ア) G45.0 椎骨脳底動脈症候群
(イ) G45.1 頚動脈症候群(半球性)
(ウ) G45.2 多発性及び両側性脳(実質)外動脈症候群
(エ) G45.3 一過性黒内障
(オ) G45.4 一過性全健忘
(カ) G45.8 その他の一過性脳虚血発作及び関連症候群
(キ) G45.9 一過性脳虚血発作,詳細不明
5. もやもや病 I675
6. 未破裂脳動脈瘤
(ア) I671 脳動脈瘤、非(未)破裂性
(イ) Q282 脳血管の動静脈奇形
(ウ) Q283 脳血管のその他の奇形

(2) ここでは、脳卒中に関連した診療行為を、例として示します。
t-PA 静注療法
減圧開頭術
経皮的脳血管形成術
経皮的選択的脳血栓・塞栓溶解術
動脈血栓内膜摘出術(内頸動脈)
経皮的頸動脈ステント留置術
頭蓋内動脈吻合術
脳新生血管造成術
頭蓋内血腫摘出術 (脳内、硬膜内)
定位的脳内血腫除去術
脳動脈瘤流入血管クリッピング
脳動脈瘤頚部クリッピング
脳血管内手術
穿頭脳室ドレナージ
穿頭術(トレパナチオン)
脳血管塞栓摘出術
脳血管血栓摘出術
脳動静脈奇形摘出術
脳動脈瘤被包術

頭蓋内血腫除去術(開頭)
四肢の血管拡張術・血栓除去術

5. 個人情報の取扱いについて

 あなたのカルテの情報をこの研究に使用する際には、あなたのお名前の代わりに研究用 の番号を付けて取り扱います。あなたと研究用の番号を結びつける対応表のファイルは入 院された施設から、九州大学大学院医学研究院脳神経外科学並びに国立循環器病研究セン ターの研究事務局に提出されることはありません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、 あなたが特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院脳神経外科学分野・教 授・飯原 弘二の責任の下、厳重な管理を行います。

6. 試料や情報の保管等について

〔情報について〕
 この研究において得られたあなたの診療情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院脳神経外科学分野並びに国立循環器病研究センターの研究事務局において研究代表者 飯原 弘二 の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。

 また、この研究で得られたあなたの情報は、将来計画・実施される別の医学研究にと っても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、 将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。そ の研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認さ れた後に行います。

7. 利益相反について〔研究計画書15.研究費及び利益相反に関する状況〕

 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進していま す。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれること もあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、 国や大学も健全な産学連携を推奨しています。 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益 相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して 九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて 実施されます。
 本研究に関する必要な経費は、厚生労働科学研究費、科学研究費助成事業、日本医療研 究開発機構研究費、環境研究総合推進費で負担し、研究遂行にあたって特別な利益相反状 態にはありません。

8. 研究に関する情報や個人情報の開示について

 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支 障がない範囲で、この研究の計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができ ます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
 また、ご本人からの開示の求めに応じて、保有する個人情報のうちその本人に関するも のについて開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

9. 研究の実施体制について

 この研究は以下の体制で実施します。

 研究実施場所 九州大学大学院医学研究院脳神経外科
  (分野名等)
 研究責任者 九州大学大学院医学研究院脳神経外科 教授 飯原 弘二
 研究分担者 九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 教授 北園 孝成
       九州大学病院脳神経外科 助教 有村 公一
       九州大学病院脳神経外科 助教 西村 中

10. 相談窓口について

 この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。

   事務局   担当者:九州大学病院脳神経外科 助教 西村中
 (相談窓口)  連絡先:〔TEL〕092-642-5524(内線2290)
            〔FAX〕092-642-5526
    メールアドレス:nataru@ns.med.kyushu-u.ac.jp